【特徴】
乳腺腫瘍は中~高齢の避妊手術を受けていないメスの犬猫によく見られる腫瘍で、乳首の周囲に硬いしこりを作ります。
犬では良性と悪性の割合が50:50、猫では70~90%が悪性と言われています。悪性のものでは腫瘍が巨大化・多発したり、肺やリンパ節への転移が見られるようになります。
この腫瘍は性ホルモンと強い関連があるとされていて、早期の避妊手術は乳腺腫瘍の予防としても勧められています。
◆犬:2回目の発情までに避妊手術 ⇒ 発生率 1/12
◆猫:7~12ヶ月齢で避妊手術 ⇒ 発生率 1/7
【診断】
確定診断には、手術により腫瘍を摘出して組織を見る「病理組織学検査」が必要となります。
当院では転移の確認のためCT検査を同時に実施することを推奨しています。CT検査ではレントゲンに写ってこないような小さな転移を早期に見つけることができます。
【治療】
治療の第一選択は腫瘍の摘出手術です。
腫瘍が発生している左右どちらかの乳腺を一列切除する方法が再発の可能性を低くできると言われています。また、未避妊の場合には今後新しい腫瘍ができにくいよう同時に避妊手術も行います。
腫瘍の直径が3cmを超える乳腺腫瘍は悪性の可能性が高くなるという報告があることから早期の摘出手術が推奨されます。
乳腺腫瘍に対する化学療法(抗がん剤治療)は未だ確立されていません。
【予後】
転移が認められない症例では腫瘍を完全に取りきることで予後は良好です。
一方で転移が認められた症例の予後は悪く、平均生存期間は6ヶ月前後という報告があります。